スタートアップ企業経営(全3回 第3回)

■指摘されているエンジェル税制の問題点。

一方でエンジェル税制の問題点は、現在のスタートアップ投資には馴染まない適用要件があるところです。それは、「従業員2名以上」という要件です。

そのほかの要件は、赤字要件や大株主がいないという、まさに志ひとつを持って飛び出した会社経営者ならば「まだ当然」といえるような内容です。ただ、従業員2名に関しては、人件費を安定的に拠出できるようになるには段階を踏まなければならない経営者ほど、エンジェル税制を味方につけて、投資家からのお金を引き出したいもの。なぜ、このような逆説的なことが起きているのでしょうか。

それは、いわゆる「ペーパーカンパニーを防止するため」です。会社の実態がないのに、書類を作り込んで申請し、エンジェル税制を適用させてしまう。そのような悪用があったため、従業員2名という要件が定められたのでしょう。

ただ、問題はこの従業員の定義です。エンジェル税制では、従業員の定義を正社員とし、いわゆる厚生年金や健康保険を従業員当人と雇用主が「労使折半」で支払っている状況としています。

一方で「現実」を見てみると、そのハードルが高いことがわかります。

3、スタートアップでいう「正社員」と「チーム」の違い

スタートアップは、正社員ひとりだけで回しているところも多いです。余計な5万円を削り、会社が成長するタイミングまで「延命」したい経営者にとって、人件費はもちろんのこと、月に数万円が飛んでいく年金支出はとても痛いもの。そのため、開発部隊を業務委託契約にしたり、営業をコンサルティング会社に委託したり、やり繰りをしています。

そのなかには、決して正社員ではないけれど、ひとつの製品・サービス(プロダクト)をつくるチームとして高い士気を誇っている、そんな会社も少なくはありません。エンジェル税制が投資家コミュニティに浸透すればするほど、税制適用の対象外となっている会社は投資不適格と見なされ、成長のチャンスを逃していく、そのような会社が増えていることに注意しなければなりません。

日本は現在、国としての底力を再び身に着けるため、起業を勧めています。また、働き方改革や副業推進により、スタートアップにとって追い風となる土台が高まっています。だからこそ、エンジェル税制の適用を見直し、より多くの会社を対象としながらペーパーカンパニーからの申請を予防することは可能です。早急の見直しを期待したいものです。

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日本の現状の制度により、経済発展に自ら縛りをかけているものがあります。経済発展に繋がる改定があると良いですね。
次回もお楽しみに^^

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ドラゴントレーダーズクラブ事務局
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